くびのブログ

数学のこととか…?

2022秋学期の授業の感想

こんにちは. 完全に忘れかけていた授業の感想の記事を書いていこうと思います. 今学期は授業が少なめで, 去年なんかと比べるとめちゃくちゃ楽でした. 鬼畜試験を課してくる授業がなかった(諸説あり)のもよかったですね.

時間割


左上のは授業じゃないんで無視してください. クリップしてただけです.

幾何学C

トポロジーをやります. といっても基本群や被覆空間にはノータッチでひたすらホモロジーをやります. 単体複体の定義から最終的にはBorsuk-Ulamの定理までやりました. 去年の位相空間論の授業と同じ先生なんですが, 自学自習が大事な感じの授業でした.

試験は過去問に1問簡単な問題を追加しただけでした. 別に過去問がなくても普通に解けるくらいの難易度だったのでそんなにガッツリ対策する必要はないと思います.

ホモロジーの基本を学ぶ機会が得られて良かったです.

測度論

通年なので詳しくは前回の記事を見てください. 最終的にはFubiniの定理あたりまでやりました. レポートの問題もそんなに難しなかったです. 良い授業だったんですが, 確か先生が今年で定年なので, 来年からは別の先生が担当すると思います……

関数解析A

こちらも通年です. 随伴作用素やら閉作用素, リゾルベント, スペクトラム, そして弱収束とコンパクト作用素なんかについてやりました. 色々やったにはやったんですが, なんというか基礎的な部分しかやってないせいか, いまいちよくわかりませんでした. 無限次元線形空間を扱う機会が今のところ全然なくて……

成績は対面試験で決まるんですが, その計算式がめちゃくちゃ珍しくて, 前期試験の点数と後期試験の点数の最大値が使われます. こういうとき最大値使うの初めて聞いた……

しかも最後の授業で試験問題ポロッと言ってました.

数学基礎論B

不完全性定理を目指して計算可能性やら表現可能性やらのいろいろをやりました. PA(ペアノ算術)っていう自然数の理論を扱ってたんですが, 前期より具体性が増してやりやすかったです.

正直後半の証明なんかは見てなかったりするんですが, 不完全性定理の証明の流れはしっかり把握しました. Twitterでも書きましたがRPGみたいで面白かったです.

2つほどマジですごいなって思ったところがあって, ひとつは対角化定理です. 自由変数が1個の論理式に対して, ”この文はそれを満たす”って意味の文が作れるって定理です. 文章で書くのは難しいですね. 不完全性定理の証明はこれを”Xは証明できない”みたいな論理式に適用して”この文は証明できない”みたいな意味の文(これをゲーデル文という)を作って行われます. これだけでも十分偉いんですが, 応用の範囲がマジで広いです. というのも, この定理を適用するための条件は”自由変数が1個”ってだけで, 複雑性なんかは一切関係ありません. 背理法でいい感じの論理式を取ってきて, 対角化定理を適用して変な文を作り出して, ハイ矛盾~みたいなことをよくやってました.

もうひとつは, ”ゲーデル数によるコーディング”です. これは論理式やその列に対して自然数を割り当てる技法で, 発想としてはシンプルです. こっちも応用の範囲が広くて, 記述できる論理式の幅がめちゃくちゃ広がります. 不完全性定理の証明に不可欠なだけでなく, いろんな場所で使われているテクニックらしいです. コンピュータとか.

試験問題は前期と同じく量が多かったですね. でもなんか面白そうな問題が多かったのでじっくり考えてみたい気持ちがあります(どうせしない).

不完全性定理をしっかり理解したことで頓珍漢なことを言っている人を鼻で笑えるようになったのがよかったです.

代数学C2

形式的冪級数や代数曲線のブローアップ, アフィン代数多様体の座標環, m進完備化などを扱いました. 他のどの授業よりスピードが早かったです……

多分ブローアップだけでも半期分の量あったと思うんですけど, それを7回くらいで終わらせてガンガン先に進むので途中から死んだ目で黒板を眺めるだけになっていました. 後半は多分グロタンディークが拓いた代数幾何をやってたっぽいんですが, 抽象度が高くて全然イメージできず, あ~代数幾何は無理そうだなぁっていう諦念を抱かされました. そんなわけで最後のレポート課題に怯えまくってたんですが, いざ公開されると全然解ける感じで本当に安心しました.

数式処理プログラミング

Mathematicaを使います. フルオンデマンドです.

前期の計算機概論の続きみたいな感じでクソヌルだと思ってたら意外と大変でした. そもそも一週間に一度しかMathematicaを触らないので毎回コマンドを忘れてるんですよね. あとなんかクセがあって扱いづらかったです. Wolframalphaに拒否られたときに使うくらいでいいかな……

幾何学B2

幾何学のすべての基本となる多様体論をやります. 毎回出される課題を解いて出せば単位が来るので1回も出席しませんでした.

もう多様体論は一通りやったので復習and単位稼ぎのつもりで取りました. 多様体論って結構広いので浅く広くやるのかなって思ってたんですが, 広く部分的にそこそこ深くって感じでした. いい復習になったし, 意外と新鮮な部分も多くて面白かったです. 良い授業だと思います.

数学特別演習

研究室の仮配属みたいな感じでゼミをやります. 僕は幾何学のゼミで「Mathematical Gauge Theory」を読みました. 先生の友人が書いたらしいです.

リー群とリー代数について学んで, 最終的にゲージ理論をやるみたいな本なんですが, そもそもリー群自体が多様体論を前提としているので, 授業以外で幾何をやってない人は読むことすらままならない感じで辛そうでした. あと証明に行間やらクセが結構あってなかなか悩まされました. 四元数の扱いが知れたのはよかったです.

まとめ

もうちょっと授業とっても良かったかな……って思いました. だいぶ暇だったので…… まあその分自分で確率統計とか機械学習の勉強ができたので良しとします. 来年はBott-Tuを読みつつ統計検定を取ったりPRMLを読んだりしたいと思います.

ではまた夏くらいに.